Plant Observation Record
植物観察記録
Plant Names and Overviews植物名と概要
ヒナノウスツボ Scrophularia duplicatoserrata
- 分類(APG Ⅳ):
- 真正双子葉類 > 中核真正双子葉類 > シソ目 > ゴマノハグサ科 > ゴマノハグサ属 > ヒナノウスツボ
- 花被片の色素:
- ヒナノウスツボの開花直後の花被片の基調となる緑色はクロロフィルに由来し、光合成能が維持されていると推測します。一方で時間経過と共に現れる赤褐色はアントシアニン類:シアニジン系の配糖体とフラボン/フラボノール誘導体の高モル比での非共有結合的な共色効果(コ・ピグメンテーション)、液胞pHにより色合いの深さや黒みが増していると推測します。
- 生息地:
- 日向~半日陰・やや湿り気のある草地、林縁、田畑、河川敷(北海道南部、本州、四国、九州)
- 花期:
- 8~9月頃(多年草、虫媒花:推測:捕食性ハチ類 スズメバチ類やドロバチ類 etc)
- 名前の由来:
- ヒナノウスツボの学名「Scrophularia(ラテン語:scrofula)」の部分は「瘰癧(頸部リンパ腺の腫れ)」に効く民間薬としての伝承から来ており、「duplicatus」の部分は「二重の、折り重なった」、「serratus」の部分は 鋸歯状の」ということから葉が重鋸歯であることを示しています。和名は、小さい=雛ノ、花冠が臼状の壺形=臼壺が由来とされてます。
- 花:
- ヒナノウスツボの花は5枚の花弁からなる5数性の合弁花で、上下に分かれた2唇形(上唇2裂、下唇3裂)の構造で、上唇内部には扇形の扁平な仮雄蕊が1本あります。
雌性先熟の性質を持つヒナノウスツボは、開花初期に下唇中央から花柱が突出させて受粉可能な状態となり、受粉後には4本の雄蕊が下唇内部から突出し、葯が裂開して花粉を放出します。こうした時間的な性差(雌雄異熟)によって自家受粉を回避し、他個体間での交配を効率的に進めています。
- 葉:
- ヒナノウスツボの葉は対生し、1~3cm程の葉柄を持ちます。葉身は卵形(~長卵形)、葉頂は鋭頭、葉縁は重鋸歯(~鋸歯)です。
- 茎:
- ヒナノウスツボの茎はほぼ直立し、高さは50cm程になります。対生葉の葉腋から左右に花序枝を伸ばす二岐集散花序(有限花序)で、上部では節間が詰まることで円錐状の二岐集散花序の集合体を形成しますが、二岐の片側が退化して伸びず互生しているように見えることもあります。断面は四角形に近く稜があり、表面には軟毛が疎らに生えます。
- 備考:
- ゴマノハグサ属であるヒナノウスツボが、ポリネーターとして捕食性のあるハチ類を誘引するための戦略については長くなるので雑記に記載します。
全体

花

花序

葉

茎

ポリネーター

Miscellaneous Notes雑記
ヒナノウスツボのポリネーター誘引方法について(推測)
欧州に分布するゴマノハグサ属の中には、ヒナノウスツボに外見もよく似たセイヨウゴマノハグサ(Scrophularia nodosa)という種があり、この花の香りの主要揮発成分として「青葉アルデヒド類(GLVs)」が検出されています。
この青葉アルデヒド類は、人の嗅覚では「草をちぎったときのような青臭い香り」として感じられますが、本来は食葉性昆虫の幼虫などに葉をかじられた植物が放つ防御シグナルです。捕食性ハチ類にとってこの香りは捕食対象が近くにいる合図であり、強い誘引源となります。
誘引された捕食性ハチ類にとっては、香りはすれども獲物は見つからない状況になるわけですが、香りの発生源である花筒内部に蜜が存在していることに気が付き、頭部を差し入れて吸蜜します。捕食性ハチ類にとって捕食行動は巣の幼虫に与える肉を確保するためのもので、成虫自身の活動のエネルギー源は花の蜜となります。
こうして捕食対象を探す目的から自身の栄養源の摂取へと行動が切り替わる過程で、体が花柱や葯に触れ、花粉媒介が行われます。すなわち本属の花は、「獲物という目的物を蜜にすり替える」巧妙な戦略によって捕食性ハチ類を効果的にポリネーターとして利用しており、ヒナノウスツボにおいても同様の仕組みが機能していると考えられます。但し近縁種(Scrophularia umbrosa)による実際の調査では、訪花者のうちハチ類が全体の約45%と多数を占める一方で、他の昆虫も蜜を目的として訪れていることが確認されています。
Comparison of Morphological Similar Plants形態類似植物の比較
形態類似植物を見分けるポイント
パッと見では形態があまりにも似過ぎていて判定に困る類似植物を見分けるポイントを自分なりにまとめています。
ヒナノウスツボと形態が類似している植物の比較ページへ- 比較類似植物:
- サツキヒナノウスツボ、ヒナノウスツボ、オオヒナノウスツボ
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2025.08.27:「公開」ページを公開しました。