Plant Observation Record
植物観察記録
Plant Names and Overviews植物名と概要
トサノクロムヨウラン Lecanorchis nigricans var. patipetala
- 分類(APG Ⅳ):
- 単子葉類 > キジカクシ目 > ラン科 > ムヨウラン属 > トサノクロムヨウラン
- 花被片の色素:
- トサノクロムヨウランの花被片はフラボン/フラボノール誘導体や極少量のカロテノイド類:キサントフィル系が補助的に関与しつつも、可視発色色素の含量が低く、花被組織の半透明性と細胞間隙での多重散乱により白色に見えると推測します。一方で唇弁先端部に見られる青紫色はアントシアニン類:シアニジン系/デルフィニジン系の配糖体の局所的蓄積と微量のフラボン/フラボノール誘導体との非共有結合的な共色効果(コ・ピグメンテーション)、液胞pH、軽度のアシル化により鮮やかさが安定していると推測します。
- 生息地:
- 半日陰・湿潤で腐植質豊富な常緑樹などの林床(本州・四国・九州)
- 花期:
- 7~8月頃(多年草、虫媒花:ポリネーター不明/自家受粉も併用)
- 名前の由来:
- クロムヨウラン(学名:Lecanorchis nigricans var. nigricans)の Lecanorchisの部分は「皿のような」、nigricansの部分は「黒っぽい」という意味を持ちます。高知県高知市で咲くクロムヨウランが採取されたことからトサノクロムヨウラン(土佐のクロムヨウラン)という和名が付けられたとされています。
- 花:
- トサノクロムヨウランの花は総状花序で、3つの萼片と3つの花弁、3心皮・3室性子房から構成される典型的な3数性の構造です。萼片は側萼片(2枚)+背萼片、花弁は側花弁(2枚)+唇弁(先端部に青紫色の毛状突起が密生し、底の深い匙型の形状をしている。)また、子房が180°捻じれる「Resupination」を経ていますが、花の向きが一定ではないため「遺伝的な名残り」による捻じれなのかもしれません。ちなみにトサノクロムヨウランは、蜜腺(蜜)がありそうに見えて無い「擬似送粉」です。
- 葉:
- トサノクロムヨウランの葉は「鱗片葉」という葉の名残りのような小さな構造を持っていますが、菌従属栄養生活に適用した結果、葉緑体を持っていません。
- 地下部:
- トサノクロムヨウランの地下茎様構造は、地下に木質化した短い地下茎様の構造を持ち、そこから長さ10~30cm程度の細長い根状器官を束をなして伸ばすことで周囲の菌類との接触面積を確保すると共に、地上部の安定性を高めています。(根状器官:通常の茎や根とは異なる曖昧な構造を持ち、菌からの栄養を受け取り植物体へ移送する共生特化型の地下器官)
- 備考:
- 完全菌従属栄養ラン。発芽期・栄養期・成体期の共生菌:ベニタケ(Russula)属、チチタケ(Lactarius)属、副次:クモノスシメジ(Inocybe)属、トメンテラ(Tomentella)属。
発芽期・栄養期・成体期において、外生菌根菌:ベニタケ(Russula)属、チチタケ(Lactarius)属、副次:クモノスシメジ(Inocybe)属、トメンテラ(Tomentella)属の関与が実証されています。 尚、リゾクトニア型菌、白色腐朽菌の関与は現在のところ確認されていません。
全体

花

唇弁

子房

副萼

葉

菌類

菌類

菌類

菌類

Miscellaneous Notes雑記
トサノクロムヨウランとクロムヨウランの違いについて
トサノクロムヨウランとクロムヨウランの違いは、咲くか、咲かないかによる判定以外にも、いくつかポイントがあるようですが、どれも解剖しなければわからないようです。
花被筒(花被片の基部から裂けて分離し始める部分まで):
トサノクロムヨウランは14~17mmで、クロムヨウランは11~14mm。
唇弁の着色と形状:
トサノクロムヨウランは唇弁の先端が尖り、クロムヨウランは唇弁の先端が丸い。
唇弁先端の毛状突起:
トサノクロムヨウランは短く密で頻繁に分岐し、クロムヨウランは長く疎で分岐が少ない。
蕊柱の形状:
トサノクロムヨウランはやや湾曲し、クロムヨウランははっきりと反曲する。
基部側花弁の幅:
トサノクロムヨウランは広め(約1.5~2.5mm)で、クロムヨウランは狭め(約1.0~1.3mm)。
葯帽の形状:
トサノクロムヨウランは軽く2裂し、クロムヨウランは明瞭に2裂する。
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2025.08.12:「公開」ページを公開しました。