Plant Observation Record
植物観察記録
Plant Names and Overviews植物名と概要
ムヨウラン Lecanorchis japonica
- 分類(APG Ⅳ):
- 単子葉類 > キジカクシ目 > ラン科 > ムヨウラン属 > ムヨウラン
- 花被片の色素:
- ムヨウランの花被片の基調となる黄色はカロテノイド類に由来し、そこにアントシアニン類:シアニジン系/ペオニジン系の配糖体による赤色の重なりとポリフェノールの酸化的重合により黄土色~褐色を呈していると推測します。一方で唇弁の毛状突起ではカロテノイド類による黄色を際立ち、唇弁喉部ではアントシアニン類による赤色が際立ちます。この部分に関しては微量のフラボン/フラボノール誘導体との非共有結合的な共色効果(コ・ピグメンテーション)、液胞pH、軽度のアシル化により鮮やかさが安定していると推測します。
- 生息地:
- 半日陰・湿潤で腐植質豊富な常緑樹などの林床(本州・四国・九州)
- 花期:
- 6月頃(多年草、虫媒花:キノコバエ類 etc/自家受粉も併用)
- 名前の由来:
- 葉(退化した鱗片葉はある)が無いことから「無葉蘭」という和名が付けられたとされています。(別名はスケロクラン)
- 花:
- ムヨウランの花は総状花序で、3つの萼片と3つの花弁、3心皮・3室性子房から構成される典型的な3数性の構造です。萼片は側萼片(2枚)+背萼片、花弁は側花弁(2枚)+唇弁(3裂:毛状突起が密生した中裂片の両サイドに僅かばかりの側裂片がある。)また、子房が180°捻じれる「Resupination」を経ていますが、花の向きが一定ではないため「遺伝的な名残り」による捻じれなのかもしれません。ちなみにムヨウランは、蜜腺(蜜)がありそうに見えて無い「擬似送粉」です。
- 葉:
- ムヨウランの葉は「鱗片葉」という葉の名残りのような小さな構造を持っていますが、菌従属栄養生活に適用した結果、葉緑体を持っていません。
- 地下部:
- ムヨウランの地下茎様構造は、地下に短い塊状または根茎様の構造を持ち、そこから長さ数cm~10cm程度の細長い根状器官を放射状に伸ばすことで周囲の菌類との接触面積を確保すると共に、地上部の安定性を高めています。(根状器官:通常の茎や根とは異なる曖昧な構造を持ち、菌からの栄養を受け取り植物体へ移送する共生特化型の地下器官)
- 備考:
- 完全菌従属栄養ラン。発芽期・栄養期・成体期の共生菌:ベニタケ(Russula)属、チチタケ(Lactarius)属、副次:クモノスシメジ(Inocybe)属、トメンテラ(Tomentella)属。
発芽期・栄養期・成体期において、外生菌根菌:ベニタケ(Russula)属、チチタケ(Lactarius)属、副次:クモノスシメジ(Inocybe)属、トメンテラ(Tomentella)属の関与が実証されています。 尚、リゾクトニア型菌、白色腐朽菌の関与は現在のところ確認されていません。
全体

花

唇弁

子房

葉

Miscellaneous Notes雑記
発芽から開花までをもう少しだけ深掘り
ムヨウランの種子が森に放たれて林床に到着すると、外生菌根菌が種皮を突破して胚に侵入し、細胞内で非コイル状ペロトン様構造(栄養供給構造)を形成します。
この非コイル状ペロトン様構造を介して得た栄養素や炭素源によって胚が活性化し、やがて「プロトコーム」と呼ばれる根も芽もない球状の組織が形成されます。
ムヨウランの共生菌は外生菌根菌のみとなり、リゾクタニア型菌や白色腐朽菌の関与は確認させれていません。
ムヨウランの共生菌として代表的なベニタケ(Russula)属、チチタケ(Lactarius)属などは、気温10~25℃程度で活発に活動し、広葉樹林の落葉層など中性~弱アルカリ性の腐植に富んだ林床を好む一方、酸性の針葉樹林は好みません。ムヨウランを探す際は、広葉樹林のやや薄暗く、落葉が豊富に積もる湿った林床で、朽木の近くや落ち葉が積もった場所を中心に探すとよいかもしれません。
Edit History編集履歴
2025.08.08:「変更」自分用メモ「共生菌」の内容を変更しました。
2025.08.08:「変更」「雑記」の内容を大幅に変更しました。
2025.07.02:「公開」ページを公開しました。