Plant Observation Record
植物観察記録
Plant Names and Overviews植物名と概要
ジャコウソウ Chelonopsis moschata
- 分類(APG Ⅳ):
- 真正双子葉類 > 中核真正双子葉類 > シソ目 > シソ科 > オドリコソウ亜科 > ジャコウソウ属 > ジャコウソウ
- 花被片の色素:
- ジャコウソウの花被片の基調となるピンク色はアントシアニン類:シアニジン系の配糖体とフラボノール/フラボン誘導体との非共有結合的な共色効果(コ・ピグメンテーション)、液胞pH、アシル化により鮮やかさが安定していると推測します。
- 生息地:
- 半日陰・多湿な渓流沿いや林縁(北海道、本州、四国、九州)
- 花期:
- 8~10月頃(多年草、虫媒花:推測:ハナバチ類 etc)
- 名前の由来:
- ジャコウソウの学名「Chelonopsis moschata」のうち「Chelone」の部分は「ジャコウソウモドキ属」の名称で、「opsis」の部分は「~に似た」という意味であることから、ジャコウソウモドキ属に似ていることが語源となります。日本では日本固有種のジャコウソウが主ですが、海外ではジャコウソウモドキが主であるため、学名と和名が逆になっています。尚「Chelone」はギリシャ語で「亀」を意味します。(同属の「C. glabra」を見ると花被の形状が「亀(の頭)」に似ていることを確認できます。)また、種名「moschata」はラテン語で「ムスク(麝香)の香り」を意味します。(シーボルトが日本から持ち帰ったものをオランダの植物学者ミクェルが1865~66に発表)
和名の由来は牧野日本植物図鑑(1940)によると「茎葉を揺らすと麝香を彷彿させる香りを発すること」に因んで命名されたとあります。
- 花:
-
ジャコウソウの花は長い花冠筒を持つ二唇形(上唇は短く、下唇は広く3裂)の合弁花で、対生する葉の葉腋から短い花序柄を出し、更にその先の花柄から斜め下向きの花を1~3個程度つけます。花冠筒の喉部には毛帯や小さな隆起、条斑が見られることがあり、訪花昆虫に対して子房基部の輪状蜜盤から分泌される蜜(シソ科の一般傾向)へのガイドとして働いていると考えられます。また、萼は合生の5歯で宿存(花が落ちても残る)します。
雄蕊(2長)と雌蕊は、花冠筒の上唇側の内壁の喉部付近から花冠開口部付近まで伸びます。(2短の雄蕊は中程まで)
「背面送粉に適した内向き展開の雄蕊」「雌雄異熟(シソ科の一般傾向として雄性先熟)」「雄蕊(2長)よりも高位置で伸長する雌蕊(柱頭2列)」など、複合的に自家受粉を回避していると推測します。
- 葉:
- ジャコウソウの葉は対生(基本は十字対生)し、葉身は卵形~倒卵形で、基部は浅心形~耳状心形、葉頂は尖鋭形~尾状、葉縁は粗い鋸歯が並びます。
- 茎:
- ジャコウソウの茎はやや傾斜し、高さ50~100cmに達します。茎の断面は四角形で明確な4稜があり、下向きの毛が密に生えます。下部では毛が硬くなり基部は木質化します。
全体

花

花

萼

葉

茎(上部)

茎(下部)

Miscellaneous Notes雑記
ジャコウソウは香りがしない?
「ジャコウソウは香りがしない」という話をよく耳にします。確かにジャコウソウの花からの自発的な芳香は殆ど感じられません。
ジャコウソウ全体を見てみると萼・葉・茎に毛が生えていますが、麝香様の香りを放つイブキジャコウソウ(別属)のように腺毛ではないため、外的な刺激(食害など)を受けない限り、香りは出にくそうです。
萼・葉・茎のうち、若葉を軽く指で押圧してみた際にだけ、青葉/青リンゴ様の一過性の香りが立ち上がります。
この若葉で生じた香りは数分で消失してしまうことから、揮発性の高いC6系グリーンリーフバイオラタイル(例:ヘキセナール/ヘキセノール)の放散だと推測します。
何れにしてもこの若葉の香りは麝香様の香りからは程遠く、個人観察の結果からは麝香様の香りを確認することはできませんでした。同属内には萼に腺毛を持つ種があるようなのですが、ジャコウソウの萼に生えているのは「毛」であったため望み薄だと思っています。
余談ですが、ジャコウジカの雄には長い牙があり、その代わりなのか角は生えないそうです。
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2025.10.16:「公開」ページを公開しました。