Plant Observation Record
植物観察記録
Plant Names and Overviews植物名と概要
ガガイモ Cynanchum rostellatum(Metaplexis japonica)
- 分類(APG Ⅳ):
- 真正双子葉類 > 中核真正双子葉類 > リンドウ目 > キョウチクトウ科 > ガガイモ亜科 > イケマ属(ガガイモ属) > ガガイモ
- 花被片の色素:
- ガガイモの花被片の基調となるピンク色はアントシアニン類:シアニジン系の配糖体とフラボン/フラボノール誘導体の高モル比での非共有結合的な共色効果(コ・ピグメンテーション)、液胞pH、アシル化により鮮やかさが安定していると推測します。部位や発達段階によってはクロロフィル残存の影響で薄く緑がかることもあると推測します。
- 生息地:
- 日向・水捌けのよい草地、林縁、藪、道端、河川敷(北海道、本州、四国、九州)
- 花期:
- 8月頃(多年草、虫媒花:ハチ類、チョウ類 etc)
小型甲虫類が受粉成立まで関与できる可能性は極めて低いと推測します。
- 名前の由来:
- ガガイモの学名「cyn:ギリシャ語 kynos」の部分は「犬」、「anchein」の部分は「絞める」を意味することから、犬を絞めるドックベイン(毒草)が由来だと思われます。「rostellatum:ラテン語 rostellatus」は小嘴を意味することから、蕊柱の上にある嘴状突起物からきたと思われます。和名の由来については諸説ありますが、個人的には葉の形状がイモ類に似ており、表面に光沢があって鏡のように反射している様子からきたといった感じの方がしっくりきます。個人的な創作話ですのでご注意ください。
- 花:
- ガガイモの花は葉腋から伸ばした花柄の先端に数花からなる集散花序を付ける5深裂の合弁花で、合蕊柱の上に付く嘴状突起物を中心に、軟毛に覆われた花冠裂片を外側へ大きく反らせながら放射状に展開します。
合蕊柱とは「雄性部(葯・花糸)」と「雌性部(花柱・柱頭)」の融合体であり、幅広の5つ花糸部が僅かなスリット状の隙間(ガイドレール)を残して花柱を取り囲んでいます。このスリットの最上部にはクリップ機構を持つ「小体」が配置されており、左右に伸ばした連結椀にはそれぞれ花粉塊が付いています。
また、ガガイモの蜜は合蕊柱基部の蜜腺(しばしば副花冠の内側)で提示され、訪花者は蜜を求めてスリットに口吻を差し入れます。このスリットの縁は上向きの条線や毛が発達しているため下方への動きは妨げられ、逆に上方への動きが誘導されやすくなっています。この構造によりスリットの最上部から口吻を引き抜いた際に小体に挟まれ、ポリナリウム(小体+連結椀+花粉塊)が口吻に装着されます。
ポリナリウムが装着された状態で別の花でも同じ動きが行われると、スリット上方の狭窄部で連結椀から花粉塊がしごき取られ、花粉塊が柱頭室内の蕊柱頭側面(受粉面)に残置され受粉態勢が整います。
- 葉:
- ガガイモの葉は対生で、葉身は卵形~長卵形、基部は心形、葉頂は鋭尖頭、葉縁は全縁です。表面は濃緑でやや光沢があり、網状脈の側脈が目立つちます。
- 茎:
- ガガイモはツル性で他物に巻きついて伸長します。毎年、地下部(根茎)から1年性の新しいつツルを伸ばす多年草で、茎葉に傷を付けると白い乳液(ラテックス)を分泌します。この辺りを考慮するとキョウチクトウ科に分類されていることに納得がいきます。
全体

花

花

葉

茎

実

Miscellaneous Notes雑記
カム/ピボットとしての嘴状突起物(推測)
ガガイモの合蕊柱上部に位置する嘴状突起物を中心に、回転しながら吸蜜を行う訪花者を確認しました。回転方向に依存せず、訪花者の口吻の入射角を一定に制御する役割を果たしていると推測します。
<仮説>
- 嘴状突起物がカム/ピボットとなり、訪花者の姿勢と口吻の挿入角度が制御される。
- これにより口吻のスリットへの入射角が別花被であっても再現されるため、ガイドレール上部の狭窄部での「しごき」による花粉塊の離脱→柱頭室側面の残置が起きやすくなる。
<予測>
1. 嘴状突起物に接触しながら回転吸蜜した場合、入射角の分散が有意に小さくなる。
2. 別花被への訪花であっても、口吻の入射角の相関性が高くなる。
3. 右回り/左回りに関わらず角度の絶対値が揃う。(花粉塊は左右に等しく付いていることにも関連する。)
嘴状突起物は柱頭でもなく、訪花者の足場としても不適当な存在ですが、訪花者の口吻の挿入位置と角度を抑制する機能を持っているのではないかと個人的に推測しています。
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2025.09.24:「公開」ページを公開しました。