Plant Observation Record
植物観察記録
Plant Names and Overviews植物名と概要
エビネ Calanthe discolor
- 分類(APG Ⅳ):
- 単子葉類 > キジカクシ目 > ラン科 > エビネ属 > エビネ
- 花被片の色素:
- エビネの背萼片・側萼片・側花弁の基調となる緑色はクロロフィルに由来し、そこにアントシアニン類:シアニジン系/ペオニジン系の配糖体による赤色の重なりとポリフェノールの酸化的重合により褐色を呈していると推測します。一方で唇弁~蕊柱接合部ではアントシアニン類の局所的蓄積による赤紫色が際立ちます。この部分に関しては微量のフラボン/フラボノール誘導体との非共有結合的な共色効果(コ・ピグメンテーション)、液胞pH、軽度のアシル化により鮮やかさが安定していると推測します。
- 生息地:
- 半日陰・やや湿潤で腐植質豊富な落葉樹などの林床(日本全国)
- 花期:
- 4~5月頃(多年草、虫媒花:ハチ類、ハナアブ類 etc)
- 名前の由来:
- ラン科植物特有の偽球茎(球状の地下茎)が連なっている姿がエビの胴体、根が髭や脚に見えることが由来とされています。
- 花:
- エビネの花は総状花序で、3つの萼片と3つの花弁から構成される典型的な3数性の構造です。萼片は側萼片(2枚)+背萼片、花弁は側花弁(2枚)+唇弁、これに加えて唇弁に付随する距があります。また、子房が180°捻じれる「Resupination」を経て唇弁を下側に配置させることでポリネーターがとまりやすくしています。ちなみにエビネは、蜜腺(蜜)がありそうに見えるが無い「擬似送粉」です。
- 葉:
- エビネの葉は春頃に新葉が顔を出してスクスクと成長を続け、冬になっても葉が枯れずに残った個体は、休眠期でも緩やかに光合成を続けます。翌年の春頃にまた新葉が顔を出す時、条件がよければ前年の葉も合わせて確認することができます。
- 地下部:
- エビネの偽球茎(ぎきゅうけい)は肥大した茎の一部で、主に養分や水分を貯蔵する器官です。外見は球形や紡錘形など様々で、1年に1個程度のペースで新しい偽球茎が形成され、地表と平行に直線状に連なっていきます。前年の偽球茎が一定期間、貯蔵機能を維持することもありますが、一般的には古くなるにつれて枯死していきます。ただし、環境によっては10個以上の偽球茎が連なる「特大エビ(勝手に命名)」を見られることもあります。dd>
- 備考:
- 一時菌従属栄養ラン。発芽期・栄養期・成体期の共生菌:リゾクトニア型菌:ツラスネラ(Tulasnella)属。
成体期において、白色腐朽菌:クヌギタケ(Mycena)属などのDNAが根圏または根内から検出さていますが、ペロトン様構造形成・栄養供給機能・発芽促進試験は実証されていないため、関与が示唆されているという表現に留めます。
全体

花

花

花粉塊

葉

花茎

偽球茎

Miscellaneous Notes雑記
ポリネーターを一発必中で狙う
エビネは、唇弁という着陸しやすい足場を用意することで、自然にポリネーター(送粉者)を花の正面へと誘導します。 ポリネーターが唇弁にとまると、その目の前には蜜腺があるかのように見える距へと向かう、蕊柱(ずいちゅう)の下に通じるトンネル状の通路が伸びています。
ポリネーターがそのままトンネル内に進入し、頭部が蕊柱の先端に触れると葯帽(やくぼう)が外れ、同時に粘着盤が花粉塊をポリネーターの頭部に貼り付けます。
その後、頭部に花粉塊を付けたまま、次の花へと移動していきます。(サンバカーニバルの頭飾りばりの大きさに見えます。)
次の花でもエビネの機構上、同様の行動を取ることになり、頭部に貼り付けられ花粉塊は、今度は柱頭に接触する角度で当たります。この接触によって花粉塊の膜が破れ、崩れ出てきた花粉粒が柱頭に付着して受粉が成立します。この仕組みは、花粉塊を適切な場所に粘着させなければ成立しない、一発必中タイプの送粉戦略になっています。
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2025.06.21:「公開」ページを公開しました。