植物の雑学
What is Pigment, the True Color of Flowers?花の色の正体「色素」とは
花の色素の種類
花には様々な色がありますが、その「色」によって訪れて欲しいポリネーター(送粉者)を大枠で選別しています。もちろん花の色だけに頼っているわけではなく、香りを出したり、見える見えないが分かれる紫外線模様を作ったり(ザックリ言うとハチ・アリ、チョウ・ガ、ハエ・アブ、トリには見える。)、好みの蜜の味に調整したり(糖の種類や濃度・pH/成分調整)など、あの手この手を使っています。
今回は花の色(色素)についてまとめてみることにしました。
植物は花被片(花弁や萼片)の色の元となる「色素」を遺伝的な指令と外部環境の影響から、適時合成・蓄積しています。植物が合成する色素は(1)フラボノイド(2)カロテノイド(3)ベタレインの何れかで、組み合わさる場合は(1)と(2)、(2)と(3)といった感じになります。(緑色のクロロフィルがプラスされる場合もあります。) 3種類の中では、カラーバリエーションが最も豊富な(1)フラボノイドの「アントシアニン」が、一番も広く分布しています。狙っているポリネーナ―の好む色に合わせた調整がしやすいことが人気の秘密なのかもしれません。

花の色素(1)フラボノイド
「フラボノイド」に分類される「フラボン」や「アントシアニン」は、花被片を形成する細胞内の小器官「液胞」の中に蓄積され、「pH」や「金属イオン」による影響で色を変化させるという特徴を持っています。フラボンとアントシアニンは共に金属イオンによる影響は受けますが、フラボンはpHによる影響を受けません。アントシアニンはpHが低い酸性で赤、pHが高いアルカリ性で青に変化します。
金属イオンによるアントシアニンの色の変化については、身近な「アジサイ」を例にしたいと思います。 まず、この話で登場する金属イオンは「アルミニウム」になります。アルミノケイ酸塩(アルミニウムとケイ素を含む鉱物の総称)として、どんな土壌でも結構多めに存在しています。
アジサイの咲く土壌が酸性の場合、アルミニウムイオンが土中に溶け出しやすくなるため、根から吸収する量も増えます。このアルミニウムイオンと液胞内のアントシアニン(デルフィニジン-3-グルコシド)が結合(錯体形成)すると青く変化します。一方、土壌が中性~アルカリ性の場合、アルミニウムイオンが土中に溶け出しにくくなるため、根から吸収する量も限定的になり、結果的に変化しない通常状態の赤~ピンクに落ち着きます。
(自分用メモ:花の色素として普及率の高いアントシアニンの配糖体「アントシアニジン」の主要6種類を記載。)
(1)赤紫~紫:シアニジン、(2)赤紫~くすんだ紫:ペオニジン、(3)鮮紅色~赤:ペラルゴニジン、(4)青紫~青:デルフィニジン、(5)青紫~青みの強い赤紫:マルビジン、(6)青紫~紫:プニシジンペチュニジン
花の色素(2)カロテノイド
「カロテノイド」は、花被片を形成する細胞内の小器官「有色体」の中に蓄積されます。個人的に「有色体って何?」となったので、有色体の概要を下記にまとめておきます。
植物が種子の状態の時、「色素体(プラスチド)」は「原色素体」というまだ何者でもない状態なのですが、発芽して成長が進むにつれて、各器官に即した分化を行います。根や塊茎ではデンプンなどの貯蔵を行う「白色体(アミロプラスト)」に、葉では光合成を行う「葉緑体(クロロプラスト)」に、そして花被片や果実ではカロテノイドを蓄積する「有色体(クロモプラスト)」にそれぞれなっていきます。
元々カロテノイドは葉緑体のチラコイド膜で青~青緑の光を吸収して、そのエネルギーを同じ場所にいるクロロフィルaへ渡したり、過剰な光エネルギーを散逸したりするのですが、開花時期が近づくと、花被片を形成する細胞内の小器官「葉緑体」のクロロフィルやチラコイドは分解され、カロテノイドは色素グロブールなどの構造体に蓄積されていきます。(花被片の葉緑体⇒有色体)
(自分用メモ:花の色素「カロテノイド」の内、陸上植物に関連する主要なものを記載。)
(1)カロテン類:β-カロテン、α-カロテン、リコピンリコペン(lycopene)、γ-カロテンなど、(2)キサントフィル類:ルテイン、ゼアキサンチン、ビオラキサンチン、ネオキサンチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、アノキサンチンなど、天然カロテノイドは600種以上といわれている。
花の色素(3)ベタレイン
「ベタレイン」は、ナデシコ目(ナデシコ科、イソマツ科、ザクロソウ科を除く)の植物にのみ存在する少数派の色素で、具体的にはオシロイバナ、ケイトウ、マツバギクなどが該当します。
ベタレインは、フラボノイドと同じ花被片を形成する細胞内の小器官「液胞」の中に蓄積されます。ベタレインを持つ植物は、進化の過程でフラボノイド合成経路を排除、または喪失しています。その理由として有力な説は、ベタレインの方が代謝経路も短く、酵素数も少なくて済むので燃費が良い上に、厳しい環境下でのストレスにも強いという特徴から選ばれたというものです。(確定では無いです。)
ちなみにですが、カロテノイドの存在する場所だけが液胞ではないため、フラボノイド+カロテノイド、ベタレイン+カロテノイドの混在は可能ですが、前述の通りアントシアニンなどのフラボノイド+ベタレインの混在はありません。
Miscellaneous Notes雑記
色でポリネーターを大別する
花にとっての主なポリネーター候補の内、チョウ・ハエ・トリは「青・緑・赤・UV」を識別できますが、ハチは「青・緑・UV 」となり「赤」を識別できません。(紫までは識別できます。)
この事から、花の「色」に特化して考えた場合、赤い花を咲かせるという選択は、ハチをポリネーターから除外していると解釈することができます。「赤」はハチには黒~灰色に見えるとのことで、実際に赤い花を訪れるハチは少ないとされています。
また、夜間に咲く花は月や星などの僅かな光でも目立つ「白」がスタンダードですが、夜は色によるアピール効果が低いこともあり、「香り」によるアピールがメインになります。例えば、夜に咲く月下美人などはとても良い香りを発します。こういった観点から花を観察してみるのも面白いかと思います。
Edit History編集履歴
2024.07.04:「追加」自分用メモとして「アントシアニジン」を追加しました。